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人間文化学科准教授 櫻井美幸

2014.11.01

世界史=暗記科目か?

みなさん、こんにちは。人間文化学科で西洋史を担当している櫻井です。
西洋史とはもちろんヨーロッパの歴史のことです。歴史、とくに世界史という科目はお好きですか? 「大好き!」という方は恐らく少数派でしょう。「ちょっと変わった人だね」と友達に思われてるかもしれません。「嫌い」「覚えるのが多いからいやだ」「単なる暗記科目だからつまらない」「昔のことなんて覚えてどうするの?」…まあ、こんな所が大多数でしょう。

自分のことを振り返ってみました。世界史は好きでしたが、暗記が得意だった訳ではありません。科学の元素記号は今思い出しても5個ぐらいしか思いつかないし、因数分解の式を出されても解けないでしょう(このあたり、知り合いは読まないでください)。

では、なんで世界史の暗記は苦ではなかったか?
歴史が好きで興味があったからです。教科として習う前に。みなさんも好きなアーティストの曲の歌詞なら苦もなく頭に入るでしょう?それと同じです。
詳しく書きましょう。

私が人間の過去の営み(=歴史)に興味を持ったのは小学校3年生くらいの時でしょうか。きっかけは姉が持っていた少女漫画を読んだからです。

 

その作品とは『ベルサイユのばら』! 
フランス革命を舞台にした一大スペクタクル作品ですね。みなさんのお母さんたちの中にも若い時夢中になって読んだ人がいるかもしれません。最近40年ぶりに新刊が出たことでも話題です。
何がよかったか? お話の面白さはもちろんですが、何より西洋文化の華やかさ、人の運命(11歳で結婚させられるとか)、革命とかいうものにみんな命をかけている不思議さとか…。つまり、夕飯にアジの開きと冷奴を食べている極東の太ったメガネ小学生女子(文字を打ってて悲しくなってきた…)にはまるっきり縁遠い外国の昔の人間たちに興味をもったんですね。

 

今の私とまったく違う人間の人生が、そこにある。私がここにいるのは全くの偶然で、もしかしたら前世は18世紀のパリで「パンよこせ!」と叫んでベルサイユに行進したおかみさんたちの列にいたのかもしれない…。
これ以降、歴史をテーマにした漫画をたくさん読みました。日本の歴史モノも読みましたが、好きなのは外国モノ。やはり西洋文化への憧れが強かったんでしょうね。
中学、そして高校で本格的に世界史を習う訳ですが、世界史の暗記は苦ではありませんでした。それは世界史が好きで、興味があったから。教師の授業が上手だった訳ではないのです。むしろ、時代の流れを追った無味乾燥なものだったと思います。
でもそのほうが都合がよかった。単調な事実の積み重ねの中に、様々な人間ドラマを自分で想像する余地があったからです。「ネロ帝って男色家だったんだよね」「王様なのに裸足で雪の上に立ち続けるなんてホント屈辱だよね!」(カノッサの屈辱です)「宗教改革で聖職者が結婚できるようにしたのって個人的理由じゃないの?」(今思うと罰あたり。でも幾分真実。それにプロテスタントでは聖職者という身分はない)

 

…話がそれました。つまり、暗記というのは暗記する人にとって意味のないものであるなら、それは無機質な記号でしかない。実際、当時の私にとって元素記号はそうでした。だから意味のない記号を覚えるのは時間がかかったし、早く忘れてしまった。しかし、歴史用語はそうではなかった。「オドアケル」も、「聖バルテルミーの虐殺」も、「1848年」も、背後に様々な人間の努力と生の営みと思想・感情が存在した。膨大な人の歴史の積み重ねの中で、今私たちが知ることができるのは、ほんのわずかに過ぎないのです。

 

少し世界史に興味が湧いてきたでしょうか?
私の専門はドイツの中世から近世にかけての歴史です。具体的には当時の女の人たちがどのような教育を受けていたか? ということを中心に研究しています。授業ではケーキの歴史からユダヤ人の歴史まで幅広くやっています。自分とはまったく関係のない遠い世界の昔の人たち。でも私たちと同じ人間なんだ、悩むし怒るし恋もする。授業を通じて少しでも世界史を身近に感じてくれたらこの上ない喜びです。

 

あ、もちろん大学の授業では暗記は一切しませんよ。

写真左:中世のお菓子について話している様子。
写真右:小学校などで絵本の読み聞かせもしています。

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