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生活文化デザイン学科准教授 須田眞史

2013.11.01

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 生活文化デザイン学科の須田と申します。建築デザイン論を担当しています。建物を設計したり、敷地や周辺環境、建物の使われ方などを調査分析して、設計するための諸条件を検討する分野です。

 

 建築は我々の生活とは切り離せない身近な存在です。みなさんも生まれたその瞬間から建築に関わっていて、今現在も、そしてこれからもずっと、住宅を始めとしていろいろな建築に関わって生きていきます。
ですので、建築について考えることは、特別なことでも難しいことでもありません。みなさんは普段の生活の中で、建物に関して「もっとこうだったらいいのに…」とか、「どうしてこうなっているんだろう?」と感じることがあると思います。
 そうした感性は是非大切にしていただきたいと思います。なぜなら、建築について考えることは、暮らしを豊かにすることにつながるからです。

 

 さて、世の中にはいろいろな種類の建築があります。その中で、私は病院建築を専門にしています。病院は誰でも容易にイメージすることができる建築ですが、そのほとんどがネガティブなイメージです。誰もが行きたくないし、長居したくない建築だと思います。しかし、我々の生活には欠かせない大切な建築です。
 病院は「24時間365日、中で人が生活している。しかもその人たちは疾病を抱えている」ということが大きな特徴です。疾病を抱えた方々というのは、空間に適応するパワーがとても弱かったり、ほとんどない場合も少なくありません。もちろん自らに適応するようにしつらえたりすることもできませんので、与えられた空間のクオリティーがとても大切になってきます。

 

 設計では、まず第一に患者が安全に安心して利用できることを心がけます。例えば、普通にベッドから起き上がったり、トイレを利用するだけでも入院患者は転倒する危険があります。転倒してしまうと骨折やさらに重度な怪我などにつながる危険性があるため、看護師が転倒しないように目を配りますが、やはり限界があります。そこで、マンパワーばかりに頼るのではなく、空間を整備することによって、転倒事故が発生しにくい、もし発生したとしても大きな怪我につながらない設計を検討します。

 

 また、病院の持つネガティブなイメージをなるべく消すことも設計では求められます。例えば、エントランスホールはホテルのように明るく落ち着いた空間、小児科の待合はカラフルで楽しいインテリアとなるようになど、いろいろとデザインを検討します。さらにそれと同時に、ますます高度化専門化する医療に応える空間を造ることも求められます。

 

 このように建築の設計では同時にいろいろなことを考えてデザインしていかなければなりません。難しい分野だと思うかもしれません。もちろんいきなり設計ができるようにはなりません。大学で建築を学び、設計のトレーニングを続けていくことで、やがて規模が大きかったり、空間構成が複雑だったりする建築でも設計できるようになっていきます。

 

 生活文化デザイン学科の設計教育では、1年生は図面の読み描き、パソコンを用いた製図方法を学び、2年生から実際に自分で考えて建物を設計する演習が始まります。まず、小さな住宅から始まり、学年が上がっていくにしたがって美術館や図書館などの公共建築や、集合住宅のような規模の大きな建築を設計します。そして、4年生になると卒業設計を行います。卒業設計はこれまで学び考えてきたことを1年かけて設計する、いわば学生生活の集大成とも言えます。さらに、私の研究室では、毎年、学生たちは全国学生デザインコンペに応募しています。これらの学生作品は日本建築家協会東北建築学生賞や全国卒業設計コンクールなどで数々の受賞をするなど、学外でもたいへん高い評価を得ています。

 

 最後になりますが、「建築の設計とは?」と聞かれれば、私はその答えは以下の3つにつきると思っています。

 

   1.誰かのためにすること
   2.今よりもよくすること
   3.物事を整理して優先順位をつけること

 

 1については、建築には必ずそれを使う人がいます。それに、建築は人から依頼されて、その人のお金で設計して建てます。ですので、その建築に関わる人たちのためのものでなければなりません。
 2については、言うまでもありません。現状と変わらないのなら、新しく設計する必要はありません。
 3については、家を新築するときをイメージして下さい。「こんな家を設計して欲しい」、家族それぞれ設計への要望はいろいろあるものです。そのすべてを叶えられればいいのですが、実はそれはとても難しくできない場合があります。例えば、プライバシーと開放感など相反する要望などは両立しないことがあります。ですので、その建物にとって、それを使う人たちにとって、何が一番大切な要望なのかをきちんと整理して優先順位をつけないと、いい建築はできません。

 

 多くの場合、人は幸せなときに家を建てます。不幸なときに家を建てようとする人はあまりいません。ですので、建築の設計とは、幸せな人をもっと幸せにする仕事だと思います。責任重大ですが、とてもやりがいのある仕事です。是非みなさんも、建築を学んでみて下さい。

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