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国際文化学科教授 杉井信

2013.09.17

 私の専攻は社会人類学で、学生時代から、東南アジアの1国であるフィリピンの文化的マイノリティ(先住民や外国からの移民)の文化や社会について学んできました。とくに、近現代の歴史のなかで、フィリピン北部の山岳地域にすむ先住民や移民の人々がどう変化し、また時代にどう対応してきたか、ずっと観察し続けています。

 この山岳地帯の先住民たちは、独自の伝統文化(歌や踊り、神話、伝説、様々な慣習など)で知られます。彼らの「ものの見方、考え方」は、きっと私たち日本人のそれとは違うだろう、と私たちは考えがちだと思いますが、それが先住民でなく日本人の子孫である日系フィリピン人であれば、その見方、考え方は日本人に近いはずだと思い込むのではないでしょうか。似ているのか、違うのか、それを判断するには、そもそも彼らがどんな「ものの見方、考え方」をするのか、一方的な思い込みや憶測でなく、きちんと調べ、理解する必要があると思います。そしてそのようにきちんと理解する必要があるのは、マイノリティの考え方だけではありません。マジョリティ(主要民族)の人々、東南アジア各国でごく普通に見かける人々についても同じことが言えるでしょう。

 ここ数年、3年次の演習では「東南アジアの価値観」をテーマに、本や資料を読み議論するという作業を続けています。まずは、フィリピンをはじめとする東南アジア各国の(マイノリティではなく、マジョリティの)人々が、どのように物事を判断したり行動することを望ましいとするのか(価値観)、またどのように考え行動する傾向があるのか(心理特性)、国別・文化別に論じた文献を輪読します。東南アジア各国各文化の価値観や心理特性は欧米とはかなり異なり、日本ともやや異なる、さらに東南アジアのなかでも国や文化ごとに微妙な違いがある、ということを受講生に確認してもらいます。

 この基礎的な作業の後、価値観や心理特性が現実の人々の行動にどのように現れるのか、東南アジアで実際に起きた(または起きている)出来事をいくつか取り上げて、受講生たちで検討します。取り上げられるのは、歴史上の大きな事件の場合もありますし、メディアで大々的に取り上げられるも、しばらくすると忘却されてしまうような、スキャンダル的な事件や、それ自体はありふれてはいるが事後処理が私たちには不可解な事故など、様々な出来事を取り上げています。

 距離的な近さもあって、東南アジアは、多くの日本人が短期や長期で訪れる地域です。戦後、20世紀末頃までの一般的な滞在形態は、観光旅行や短期ビジネス滞在、駐在員が多かったと思われますが、近年では、語学留学や現地企業への就職、定年退職者のロングステイなど、じつに多様化しています。本学の学生のなかにも、在学中に旅行や語学留学で東南アジアを訪れる人が大勢いるようです。

 訪問・滞在する日本人と東南アジアの人々との接触機会も、増加し多様化していることは間違いないでしょう。このような状況で、私たちが東南アジアに短期・長期に滞在する場合に、異文化に関心を持たず、文化、とりわけ「ものの見方、考え方」の違いにも注意を払わずに滞在し続けることは、もちろん可能ではありますが、そこに暮らす人々の「ものの見方、考え方」を理解しようと努めるならば、それは知的にも、精神衛生上も、さらには安全上も望ましいことではないでしょうか。

 異文化接触の機会は、なにも国外だけではありません。グローバル化が進む今日、私たちの身近な国内でもあるはずです。異文化の人々の考え方を学ぶことは、彼らとの間で、要らぬ摩擦を回避したり、きちんと意見を言い合って、健全な関係を結ぶためにも、必要なことではないかと考えます。

 私の社会人類学では、このように時代と共に変化する価値観を学び、異文化への理解を深めていきます。未来のグローバル社会に向けて、見知らぬ異国に対する視野を広げていきませんか?

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