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発達臨床学科教授 相原芳市

2013.07.17

私は、発達臨床学科の福祉コースを中心に、「地域福祉論」「福祉行財政と福祉計画」「ソーシャルワーク実習」等を担当しています。
「地域福祉」については、これまでも様々な議論がなされてきましたが、法律に初めて明記されたのが、2000年(平成12年)制定の「社会福祉法」ですから、まだまだ、新しい考え方と言えます。しかし、今、福祉サービスシステムの中では、社会福祉のメインストリームと言えるほど注目されています。

皆さんは、「地域」という言葉から何を思うのでしょうか、我が町、ふるさと、コミュニティなどの言い方もありますが、そこでの共同体験、共同生活をイメージするかもしれません。地域とは、その活動内容や課題により、それぞれエリアの範囲を異にすることから、町内会圏域、小学校区圏域、中学校区圏域、市町村圏域など様々な重層的な圏域のイメージでとらえていく必要があります。

現在、都市部では、近隣の住民同士の関係性の希薄化、孤立死など様々な問題が浮かび上がっています。
たとえば、大学に進学するために親元を離れてアパートで一人暮らしをする時に、最近は、隣近所に挨拶回りをするでしょうか。「若い娘の一人暮らし」を伝えに行くようなものだから挨拶回りなどすることはないと、親に言われるかもしれません。

本来は、その地域に住むこと自体が、地域の一員になるはずですが、私たちは隣にどんな人が生活しているのかよく知りません。すれ違っても挨拶もしません。何かさみしいような、それが都会の生活だと割り切るしかないのでしょうか。これでは、災害時に、障害や寝たきりで救援・援助を必要としている人がこの地域にどれくらい住んでいるのかわからず、お互い助け合うこともできません。

一方、過疎地では、若者が少なく、収穫の時期が来ても庭の柿を収穫する人がいない。屋根の雪下ろしができない。消防団の団員が集まらない。バスが不便で通院できないなどなど。都市部でも過疎地でも、以前はもっとあったはずの「地域でお互い助け合う力」が低下しています。

もう一つ、これからの福祉を考える際に外すことのできない問題として高齢社会があります。
日本は、世界に例を見ないスピードで、高齢社会を迎えています。戦後のベビーブームであった昭和22年から24年生まれのいわゆる“団塊の世代”と呼ばれる人々が、2015年(平成27年)にはすべて65歳を超えて高齢者の仲間入りを果たすことになり、少子化の影響もあり、現在4人に1人の高齢者が、なんと2033年(平成45年)には3人に1人が高齢者という超高齢社会になるのです。
これまでの福祉では、生活が苦しい人、障害のある人など、ある一部の特定の人が支援対象でした。こうした人に対しての援助は、国や行政の仕事であり、一般の人々にはあまり関わりのないことと捉えられがちでした。しかし、平均寿命が延び、状況は一変しました。周囲を見渡せば、どんなに優秀な学者であろうと、どんなに立派な政治家であろうと、どんなに裕福な事業家であろうと、高齢になった時に、残念ながら、寝たきりや、認知症、一人暮らしにならないとは言えないのです。つまり、福祉の対象者になる可能性は、ごく一部の人ではなく国民の誰もが持っているのです。
従って、これからの福祉は、すべての人に関わる課題であり、これらの課題解決には、単に国や行政機関が考えるだけではなく、それぞれの地域の実情に合わせて、より身近な市町村や地域単位で、そこに住んでいる住民自らが、自分たちの地域を住み良い地域にするためにどうするかを考えていく必要があります。地域福祉で掲げる、住民主体、行政と民間の協同、行政と住民による新しい公共、地域の住民も加わって作成する地域福祉計画などもこうした視点で考えていくことが重要です。

ところで、自分で自分の後ろ姿を見ることはできませんが、最近、小学校の時代の同級生等の髪が薄くなったり白くなったりしているのをみると、私もやっぱり年だなと感じます。見る人が見ればすぐわかるように、私も前述した、“団塊の世代”の一人なのです。
この“団塊の世代”の高齢者は、戦前戦後の大変な時期に、自分のことはさておき、国のため、家族のためにと我慢に我慢を重ねてきた方々とは異なり、高度成長時代から低成長時代を切磋琢磨して過ごしてきただけに、それぞれに多様な自分なりの価値観や確固たるライフスタイルを持っている方が多いように感じられます。
言い換えれば相当わがままなのかもしれません。福祉施設や福祉サービスを利用することになっても、「俺は介護保険料を払っている客だぞ。もっときちんとサービスをしろ。QOL(生活の質)を何だと思っているのか」などと言い出すかもしれません。
しかし、何しろ間もなく3人に1人が高齢者です。福祉施設は勿論、住宅も、商店街も、道路や交通機関、レストランも、居酒屋までもが、バリアフリーどころか、必要とする誰も(特に高齢者)が利用し易い、ユニバーサルデザインへと形を変えていくとともに、社会が、制度が、文化が大きく変わり、ありとあらゆる社会システムが高齢者モードで展開していくことにならざるを得ないでしょう。
さあ、次世代を担う若者の皆さん、今は若くても、いずれ皆さんも高齢者になります。どんなに重い障害があっても、みんなが地域で、自分らしく安心して生活できる地域福祉をどう構築していくのか、自分自身の問題として、ともに学び、考えていきましょう。

re130717

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