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生活文化学科准教授 大久保尚子

2008.09.26

こんにちは。生活文化学科の大久保尚子(おおくぼ・なおこ)です。
曇りがちなこの頃、研究室の窓からはホトトギスの鳴き声が聞こえてきます。
 夏本番まであと少し。今回は「服飾美学」や「生活文化史特論」などの講義資料を兼ねた、私のゆかたコレクションの一部をご紹介します。

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 まずはこちらをご覧ください。いきなり髑髏(どくろ)が目に入り、ちょっと驚いた方もいらっしゃるかもしれませんね。デザイナー芝崎るみさんのブランドRumi Rockの作品「月に髑髏文様ゆかた」です。
 髑髏(どくろ)といえば、昨今では「ゴス」系モチーフの代表という感がありますが、この図案には、流水や女郎花(おみなえし)を重ねた月、柳に蝙蝠(こうもり)など、日本的な要素が盛り込まれていますね。
 実は髑髏(どくろ)文様は、江戸時代には「野晒(のざらし)文様」と呼ばれ、侠気を誇る「男だて」や遊女など一部の人々に着られていたのです。一体どんな思いを込めて、髑髏文様は着られていたのでしょう?一つのヒントが、このゆかたの中にも隠されています。

 

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 左裾に玉かんざしをあしらった髑髏(どくろ)が見えるのがわかりますか?これは、小町髑髏伝説にちなむモチーフです。野辺にうち捨てられた小野小町の髑髏が「秋風の吹くにつけてもあなめあなめ(ああ目が痛い)」と目からすすきが生えた痛さを歌った、という小町髑髏伝説は、人生のはかなさ、無常観を伝えています。平たく言えば、どんな美人も死んでしまえば同じ髑髏となる、そんな達観した境地が込められているといえるかもしれません。
  ところで、このゆかたは、もちろん現代の作品です。実は某ロックミュージシャンからの注文が発端となったデザインなのだそうです。江戸と現代はつながっている?詳しい検討は、授業など別の機会にゆずりますが、少なくとも、文様(デザイン)に込めた思いには相通ずる部分がありそうですね。

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ゆかたの楽しさは、染めの味わいにもあります。
たとえばイラストレーター松尾たいこさんのデザインを染めた「地球」の文様のゆかた地。宇宙から眺めた地球の姿をとらえたスケールの大きな着想によるデザインですが、「水の惑星」を象徴する透明感あるブルーのぼかしが深い印象を与えます。
 このような美しいぼかしの染め色は、「注染」という技法ならではのものです。
 「注染」とは、ゆかた地、手拭い地の染め技法の一種で、屏風だたみにしながら型付けした布の上から、文字通り染料を注ぎ、コンプレッサーで吸い取りながら染めるものです。じょうろのような道具を使って職人さんの手で染料を注ぐので、このような美しいぼかしが可能なのです。
 大正から昭和初期にかけて発達した「注染」は、手仕事と機械工業、両方の側面を持つ面白い技法です。戦前からある「注染」ですが、21世紀のデザインに新たな魅力を与えてくれる可能性も秘めています。

 

 ここにご紹介したような優れた作品に触れることを通して、得るもの、気づかされることがたくさんあります。授業を通じて、それらを学生の皆さんと分かちあってゆきたいと思います。

 

 

 

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