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国際文化学科准教授 岩川 亮

2013.02.20

今更なんで私ごときがここに登場するのか、どなたにも理解できないでしょうし、当の本人が不思議に思っているのですが、実は、この3月をもって私はこの大学を退職するのです(最終講義の予告がこのホームページにも出ていましたが、これもすでに終えました)。
ということで、今日は、この大学を目指している高校生の皆さんに興味がありそうな海外実習について、いくらか紹介することで、私の置き土産にしたいと思います。

 私がこれまで担当した海外実習は、かつての短大教養科で外国文学を担当していた時に実施したフランス文学研修が最初でしたが、その後、国際文化学科がスタートし、現在も出向・所属しているこの学科のヨーロッパ実習をこれまで引き受けてきました。そして、昨年の夏休みに行ったウィーン、ミュンヘン、パリ実習旅行が最後の任務になった次第です。

 ところで、今回の実習はドイツ語・ドイツ語圏文化が中心ですからドイツ語ができなければなりませんが、参加学生は事前にドイツ語を習得しているとは限りません。もちろん、参加希望者には1,2年次にドイツ語クラスを受講するように事前指導しますが、他の外国語を受講した学生が参加することもあるのです。そんなわけで、夏休み前の前期授業においては、オーストリアの歴史や文化に関するドイツ語のテキストを読みながら、初級から中級程度にまで及ぶドイツ語の訓練をしなければなりませんでした。これは、学生にとっても教える側の私たちにとっても実にタフな仕事です。しかし、ドイツ語文化に接したい、ドイツ(オーストリア)に行きたいという熱意はあらゆる困難を克服する動機になるのです。実際、ドイツ語抜きでドイツ語文化を愉しむことは難しい、ということ。それは、現地で人と接してみればすぐにわかることでしょう。

 実習は具体的にどのようなものか。
 ヨーロッパ実習は基本的に3週間ですが、今回は8月25日に仙台を発ち、9月18日にパリから帰国するという25日間の旅になりました。

 先ずはウィーンでの語学研修とハプスブルク帝国の遺産をめぐる文化の学習。2012年はグスタフ・クリムト生誕150周年であり、各種の記念行事がありましたが、わたしたちにとっても、この耽美的画家の画業をあらためて見つめなおす機会になりました。学生たちは、ベルヴェデーレ宮殿で見た『接吻』の官能美、琳派を思わせるその装飾性に、日本的審美眼だけでなく、東洋と西洋の美の融合をも見出したようでした。

 大学生の研修は、日本的な団体行動の殻を破る自主的で果敢な知的活動でなければなりません。それを実現するためには、内発的な動機に発する自律的学習をしっかり準備しておくことが必要です。はたして、彼女たちは初めて訪れるこの歴史的都市で、そのことに関し納得し、満足したのか、それとも悔やんでそこを去ったのか? この町の歴史と美とは余りにも深遠で微妙なものであったように思われました。

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1週間目の週末は結構な長旅でドイツを訪れ、ミュンヘンの町を堪能しました。ここでのハイライトは、歴史と文化は当然のこととして、学生たちがナチスの強制収容所に関心を示したことでした。観光やショッピングに精を出す者もいないわけではないけれど、それはあくまでもついでの仕事、現代の歴史に強く惹かれた学生たちは、その後のパリでもウィーンでもユダヤ人問題をめぐって考え、深い思いに沈んでいました。

 2週目の週末にはウィーンを離れ、パリに移動してのフランス文化研修です。花の都とは言うけれど、多民族雑居都市の下町は、清潔で美しい仙台に慣れた学生にしてみれば何とも表現できない剣呑な雰囲気であったようです。それにもかかわらず、やはり若者の好奇心とバイタリティはそうした心理的バリアーをはねのけ、2週間のヨーロッパ都市生活で身に着けた都市遊泳術を発揮して、モン・サン・ミッシェルへユーロディズニーランドへとパリの外にまで自由に飛びだして行ったのでした。

 かくして、わが最後のヨーロッパ実習付添の旅は終わったのであります。

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