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心理行動科学科教授 大橋智樹

2009.10.16

こんにちは。心理行動科学科の大橋智樹です。

1心理行動科学科は2007年春にできた宮城学院女子大学でもっとも新しい学科の一つです。「心理学は、机の上だけでは学べない」を学科モットーに、“実証と実践の科学的心理学”を学ぶ学科です。大学の教室に座って話を聞くだけでなく、自分で実験を考えてデータを集めたり、街に出て調査をしたりと、活動的なカリキュラムを特徴としています。

 

私が担当しているのは、心理学の中でも産業・経営心理学という分野です。高校生の皆さんを初めとして一般の方にはあまり聞き慣れない分野かもしれませんね。でも実は、とても身近な問題を扱っている学問なんですよ。

たとえば、皆さんが毎日見ている広告。街角、新聞や雑誌、電車やバスの中など、いろんなところに広告が出ていますよね。それらの広告には、必ず「伝えたいメッセージ」があります。そのメッセージを伝えるために企業は安くないお金を払っているというわけ。
では、どうしたら「伝えたいこと」を「伝えたい人」に「うまく伝える」ことができるか。こういうことを研究する分野は広告心理学とか、マーケティング・リサーチと呼ばれ、産業・経営心理学の一部です。

この他には、事故を起こらないようにする研究も産業・経営心理学の重要なテーマです。最近もニュースで取り上げられているJR西日本の福知山線の脱線事故のように、運転士さんのほんのちょっとのミスが多くの人の命を奪ってしまうことにつながります。このようなミスは、「ヒューマンエラー」と呼ばれますが、どうしたらヒューマンエラーが起こりにくくなるかとか、万一、ヒューマンエラーが起こってしまってもその影響をできるだけ小さくとどめるためにはとうしたらいいか、などを研究します。

ヒューマンエラーとも関連しますが、私自身がずっと取り組んできたのは「安全と安心」の問題です。たとえば、原子力発電所を造った人たちは発電所が安全だと言っているけれど、その説明を聞いても安心できない人もたくさんいます。それらの人たちに、どんな風に説明したら、安心してもらえるのか。あるいは、安心してもらうことは無理なのか。そんなことを探る研究です。簡単に答えが見つかるわけではありませんが、それだけに取り組み甲斐のある問題だと思っています。

私のゼミでは、このような産業や経営の現場で起こっている問題を解決するために、心理学にできることはなんだろう?ということを日々考えていきます。そこで重要になってくるのは、広い視野とさまざまな経験の蓄積。大橋ゼミでは視野を広げるために、そして経験をできるだけ多く蓄積するために、さまざまな機会をつくっています。

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他大学の学生さんたちと一緒に町工場の調査をしている様子です。

たとえば、学会の夏季セミナーへの参加もその一つ。毎年8月の終わりに行われ、全国10以上の大学から70名以上の学生さんが集合して、産業現場を見学し、そこに存在する問題を見つけ、学生さんたちだけで話し合って解決を提案する、という2泊3日の合宿です。参加する学生さんは大学が違うのはもちろん、経営工学や人間工学など、心理学とは異なる学問を勉強しているので、いわゆる“異種格闘技”的な状態。参加したゼミ生からはたいへん貴重な経験になったと好評です。来年度は、大橋ゼミが主催して全国から学生さんを迎えることになりました。これだけ大きなイベントを企画・運営するというチャンスもなかなかありませんから、そういう意味でもいい経験になることでしょう。

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町工場の調査を踏まえて産業心理学的な改善提案を考えます。

 

「大学で学ぶ」ということは、「何か具体的な知識や技能を身につける」ことだけではありません。それらを通して、卒業後の人生をより豊かに送ることができるようにするための能力をも身につけることだと、私は思っています。心理学は、文科系の中にあって理科系的な要素をもあわせもつ学問で、さまざまな機会に応用しやすい能力を身につけられる学問と言えるかも知れません。

さらに、社会での実践が加わればまさに鬼に金棒。耳慣れないけれど、実はとても身近で重要な問題に取り組んでいる産業・経営心理学。大学で勉強することを考えている方々の、選択肢に新たに加えてもらえれば幸いです。

 

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