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人間文化学科教授 志村文隆

2010.09.13

こんにちは。
人間文化学科の志村文隆です。
専門は方言学(地域言語学)・日本語学です。研究の対象にしているのは、北海道、東北地方や沖縄などの方言です。

皆さんは方言というと、何を思い浮かべますか?
「メンコイ(かわいい)」、「ナゲル(捨てる)」、「アグド(かかと)」などの単語だったり、文末に付く「べー(だろう)」や、宮城県の「ダッチャ(だ)」などをあげる人もいるかと思います(写真1)。

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なになに?
「私は方言を使わないで標準語だけで話してます」ですって?

 

 では、宮城県の人に質問!
「今日もイキナリ暑い」。
 使いませんか? 「イキナリ」は標準語(共通語)では、「急に、突然」のような意味ですね。ところが、「イキナリ暑い」というのは、「とても暑い」の意味で使われています。宮城県のおもに若い世代が話す方言です。
 山形県では、①と書いて読み方は「イチマル」。(2)は「ニカッコ」だよね。皆さんは「マクドナルド」は「マック」と言いますか? 大阪では「マクド」(「ク」を高く発音)です。
 方言は中学生、高校生にだって使われているものがたくさんあります。発音やアクセントにも方言があります。地域や社会による言葉の差なんですね。

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さて、いま私が取り組んでいることの一つが、いろいろな人から風や天気の方言を聞くことです。東北や北海道と、沖縄県の伊良部島(いらぶじま)で調べています(写真2)。私が聞き取り調査をした伊良部島のある漁師さんは、風向きの違いによって14語の方言を使い分けます。

角度にして25度の違いの風もすぐ区別して、これから天気がどう変わるかをぴたりと当ててしまいます。方言は仕事や生活の道具になっているのです。

方言には、その土地で暮らしてきた人たちの文化や歴史が反映されています。生活に密着した言葉だからですね。実際に現地に行って、地元の人から話を聞き、ある分野の方言をまとめて調べてみると、長い間、土地の人々に伝わってきた世界が浮かび上がってきます。本にも書かれていない、手つかずの世界を開いていくのは楽しいですよ!

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写真3は伊良部島の「ニシノハマ」という場所で撮った沖縄の伝統的な船「サバニ」です。「ニシノハマ」とは「西の浜」ではなく、なんと「北の浜」の意味なんですよ。沖縄では、「北」のことを「ニシ」と言います。さらにおもしろいことに、「ニシ」を方位磁石の指す「北」から時計回りに45度ぐらいずらして「北東」を指して使っています。

res100909dこのように、方位を表すことば(方言)全体が、自然の方位からくるりと45度回転している不思議な現象(民俗方位とか人文方位と言います)は、島の道路とか、集落の作り、家の玄関の位置や部屋の間取りなどにもいろいろな形で現れてきて、いま、伊良部島の隣にある宮古島でゼミの学生たちと詳しい調査をしているところです(写真4)。

 

res100909e写真5は竹富島(たけとみじま)で私が撮影した方言札の実物です。私のゼミでは、これまでほとんど行われたことがなかった、方言札体験者への聞き取り調査を7年前から沖縄本島で毎年実施しています。ここから学生の立派な卒業論文も生まれました。

 

 

そんなゼミの学生たちが、毎年10月に行われる大学祭で、沖縄のお好み焼き「ヒラヤーチ」を作って出店しています(写真6)。本場沖縄に負けない、なかなかのおいしさです。どうぞお立ち寄りください!

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沖縄の話が多くなりましたが、ゼミでは全国各地での方言のアクセントの調査や、宮城県内で古くから使われる方言の現状を調べる調査にも力を入れています。

res100909g昨年は、宮城県の野々島(ののしま)から寒風沢島(さぶさわじま)に向かう片道わずか2分の渡し船に乗って、学生たちが調査に向かいました(写真7)。島の方言を「今も使っている」、「昔は使った」などに分けて聞き取りました。

 

 

 

4年前になりますが、ゼミ生たちと宮崎大学国語学研究室の学生の皆さん、先生方との合同で宮崎県庁などを会場に宮崎市のかたの発音を調べました。宮崎県庁前で調査メンバー全員が集合しました(写真8)。

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宮崎市のアクセントは、仙台市を含む宮城県南や福島県などと同じ種類のアクセントなんですよ。ところが、調査をしてみたら、同じ種類なのに、宮崎と仙台とでは違いが生まれていました。仙台市では共通語のアクセントで発音する10代、20代の人が特に多くなっています。さて、それはなぜでしょう?

このように、言葉を通して浮かび上がる「人間と文化」。
皆さんも方言が開く世界をいっしょに追求してみませんか。

 

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