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音楽科教授 小山和彦

2010.10.15

音楽科で作曲法、音楽理論、ソルフェージュなどを担当している小山和彦です。

大学の内外では作曲家として、作曲だけではなく様々な編成による編曲もしております。
作品をご依頼頂いたら出来るだけお引き受けするようにしているのですが、そのためでしょうか、珍しい編成の作曲もいくつか手がけてきました。その中から最近の作品をいくつか紹介すると、女声合唱と3台のピアノによる「伊予の四季」。この作品は現代俳人の句に基づいて作曲し、2004年に松山で初演したものです。

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本番前の打ち合わせの様子

 

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コンサート本番の様子

2006年には邦楽器の尺八とピアノのための作品で「冬の幻想」を初演しています。また、東京オペラシティで主催しているリサイタルで「バッハからコンテンポラリーまで」というシリーズが続いておりますが、昨年はその中でテューバとティンパニーによる「3つの投影」という作品を初演しました。

こういった、まだ自分が経験していないとか、世の中にあまりない、ひょっとしたらまだ存在しないかもしれない編成で作曲するのは、特に取っ掛かりが苦しいのです。しかし、しばらく筆が進むと未知の世界に足を踏み入れたように楽しくなってきます。それぞれの楽器や声など、演奏するための媒体は、起源や発達段階がもちろん異なっていますし、関わった演奏者、作曲家によってもちろんレパートリーも様々です。時には表現力を高めるために改良も重ねられます。つまり、違った特性を持つ楽器を組み合わせて作曲するのは、人間社会に喩えると、いかにしていろいろな人々とコミュニケーションを取るかということになろうかと思います。

私たちも、身近にいるいろいろな人々だけでなく、違った文化、思想を持つ他民族と理解し合えるのは楽しいはずですよね。

作曲を依嘱された際は、依頼主の要望に応えるべく仕事をこなさなくてはなりません。その一例を紹介しますと、昨年、とある高等学校の箏曲部から箏の合奏曲を依嘱されました。邦楽部門のコンクールで新作を演奏したいということで演奏難度の高い作品を求められました。その高校は見事、コンクールで最高の賞を受賞され、私の作品もその後まもなく再演されるということがありました。もちろんそれを練習する高校生の努力は並大抵ではないし、私もその箏曲部を指導されている先生と、希望に叶ったものになるよう作品についてのやりとりを半年に渡ってしましたが、その都度練習の録音が送られ、CDなどの資料は10枚近くになりました。ここまで自分の曲を検討、修正するために、繰り返し何度も聴いたことはありません。多分、この幸せな記録は生涯の中のトップスリーに入るのは確実でしょう。

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さて、宮城学院で私が行っている仕事の一端を紹介しましょう。音楽科では、クラス授業による作曲法を担当しています。最近は課題として前期に器楽曲、後期には女声合唱曲を作曲させています。しかも、必ず学生自らに演奏をさせるのです。音の出ない楽譜だけの音楽なんて、絵に描いた餅ですから意味がありません。

 

器楽曲の音出しでは自分が専攻する分野だけではなく、副科で履修している楽器になることも多く、なかなかテクニック的に満足の行く演奏を期待出来ないかも知れません。しかし、限定された範囲で効果的なものを書けるかどうかは、将来、作曲をしなくとも良い経験になります。女声合唱は作曲はもちろんですが、試演もこれまた大変です。合唱だけでなく、吹奏楽、オーケストラなどを経験した方ならよく実感出来ることでしょうが、アンサンブルがある程度の規模になってくると、練習などいろいろな面でしっかりとした計画性がないと演奏が成立しません。最近、コミュニケーションがきちんと取れず、人生設計が出来ない若年層が多いという報道を時々目にしますが、前述の活動は人間関係を築き、先々の見通しを立てるちょっとした訓練の場にもなっていると思います。

 

ところで、宮城学院には音楽科のほかに4歳から20歳までが学べる音楽科附属の音楽教室(男子もいますよ!)があります。私が赴任した時、音楽教室の弦楽器部門ではヴァイオリンの個人レッスンしかありませんでした。弦楽合奏をやりたいが、教室生のレベルに合った曲がなかなかないということで、早速、ヴァイオリン合奏とピアノによる作品を書き、翌年以降は第1、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという通常の編成で弦楽合奏の作品を数曲書きました。

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写真は音楽教室設立50周年記念発表会での「光の絵」再演の様

プロに作品の演奏を依頼すると一般的には少ない回数のリハーサルしか出来ませんが、教室の先生の熱心な指導のもと、時間をかけて子供たちが練習してくれますので、私自身弦楽器の書法を学ぶ良い機会にもなっています。今年も11月7日に学内で開催される音楽教室の発表会で1曲初演する予定になっております。

ここまで読んでくださった方の中には、「作曲って大変」と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、作曲は誰にでも出来るものです。当たり前ですが私たちは日本語で手紙などの文章を書くことが出来ます。作曲もそれと全く同じで、言葉の代わりに音符というか楽音を使うというだけのことです。もちろん文章力が国語力に比例するのと同様に、作曲をするとどれだけ音楽に接しているのか、音楽がどれだけ好きなのかが反映されますが、それぞれの段階に応じたものが必ず書けると思います。

音楽を演奏するということは、機械がただ楽譜に書かれていることを再生するのではありません。そうであるなら感動も何もありませんし、人間が時間と労力をかけて練習し、楽曲を演奏する意味がありません。楽譜から何を読みとり、どのように表現したいか、そして誰かが音を通して何かを感じ取ってくれる、そんな演奏が出来るようになるためにも、自分が一度音楽を作る側に回るのは良い経験になると思います。

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