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人間文化学科 教授 八木 祐子

2018.10.01

「私、あまり行きたくないな」、サンギータがつぶやいた。私が、「11月に、彼の家に行くのは嬉しいでしょ?」ときいたときだった。彼女は22歳で、2月に結婚式を終えたばかりだ。インドではもう1度、儀礼をおこなってから共に暮らし始めるので、まだ夫の家では生活したことがない。サンギータは「だって、彼は長男で妹が4人もいるんだもの、大変でしょ。だから向こうに半分、こっちに半分いるのがいいな」と言った。私は「1日に何度も彼と話しているじゃないの?」というと、「最近は1日に1度だけ、前は3度だったけど」とちょっと恥ずかしそうに答える。すると、兄嫁が「何言ってるの、前は1日に5度も6度も電話してたんじゃないの、今は2回か3回に減ってるけど」とからかう。私も、サンギータが彼から贈られたピンクのスマホで嬉しそうに話すのを何度もみている。だが、実際に、結婚生活を始めるのは不安なのだろう。

私の専門は文化人類学で、ジェンダーが主要な関心テーマだ。北インドの農村で、長年、フィールドワークをおこなってきた。今年も9月に村で調査をおこなったが、サンギータとの会話はそのときのものだ。私はこのような何気ない会話を大事にしている。フィールドワークには信頼関係がとても重要で、調査地で時間をかけて築いてきた。インドの村でもスマホが使われていること自体、驚きかもしれないが、今では村の若者にとってもSNSやYou-Tubeは生活に欠かせないアイテムだ。抑圧された女性という画一的なイメージではなく、今を生きるインド女性の多様な姿が伝わるようにと願って研究し、授業でも紹介している。

仙台七夕では、ゼミでサリーを着て歩き、インド女性の生活を体感してもらったり、またインド実習もこれまでに6度おこない、生のインドを経験してもらっている。大学では、ぜひ、自分の足で歩き、自分の眼でみて、自分の頭で考えることを、大切にしてほしいと思っている。

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