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日本文学科 教授 J.F.モリス

2018.09.03

私は、オーストラリア出身ですが、留学生として東北大学に1974年に来て以来、ほとんど仙台市及びその近辺に住んでいます。故郷を離れて44年が経った今、もはや、宮城県の方が自分の「故郷」となっています。
専門は日本史で、特に仙台藩の武士社会について研究をしてきました。現在は、仙台藩の下級武士の生活について調べています。時々、古文書の向こう側に「人間の顔」が見えた時に、驚いたり、プッフと笑ったりするような瞬間があり、それが面白くてこの研究をやめられません。

一例として、仙台藩の武士が公務を休む正当な理由として、「洗濯」があったとわかった時、まず、思わず笑いました。
しかし、この「洗濯休暇」の理解も一筋ではいかず、今でいう「ずる休み」に使われていたような事例も古文書の行間から透けて見えてきます。
一例として、ある若侍は、田舎の実家に帰省して洗濯したいと申し出て認められましたが、
帰省してからの彼の日記を読むと、洗濯をせずに周辺の農家を渡り歩いてただ酒を飲んでいたという記事しかありません。
酒好きの若侍の発見そのものは歴史を書き換えるような大発見ではありません。しかし、地域の失われてかけた記憶を再発見して、そこから読み取れる歴史的な意義をも再構成して地域の人たちにわかるような形で返すという作業は、過疎化と災害によって危機に瀕している地域社会の人たちにとって、自分たちのアイデンティティを取り戻し、地域の再生に取り組む一つの原動力ともなり得ます。

特に3.11以降、宮城県内の歴史家が進めてきたこの地道な作業は、今、UNESCOから注目され、2018年11月に、この活動についてUNESCOのパリ本部で報告をしに行きます。
授業では、先入観に囚われることなく、日本の文化の歴史的な変遷を見つめるよう、心がけています。歴史を知れば、日本の「常識」とされる事柄の多くは、実は、意外と新しいことが見えてきます。

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