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生活文化デザイン学科 准教授 安田 直民

2017.09.15

生活文化デザイン学科の安田直民(やすだなおたみ)です。
2016年度より本学の教員として、主に建築設計の授業を担当しています。
また、建築設計事務所を共同主宰し、幼稚園、住宅、診療所、教会など様々な建物の設計をしています。
私はいつも建築物を設計することは多くの人と協働作業をすることだと考えています。設計もまた、建物を建てるための一つのプロセスだからです。

2011年3月、東日本大震災が発災しました。建築士として何ができるのか、被災者相談から、災害公営住宅の設計まで様々な復興支援活動に取り組む中で、建築という枠を超えた横のつながりが欠かせないものであることを痛感しました。そうした状況の中、復興活動で知り合った多くの方々と「みやぎボイス」という新しい形の会議体を立ち上げました。

年に1回開かれる「みやぎボイス」は、学識、行政、被災者、ボランティアなど延べ400人近い人々がラウンドテーブル(複数の円卓を囲むカンファレンスが同時進行する公開会議)形式で議論をするシンポジウムであり、自分の専業を超えた広い協働の場を作る試みです。また、サポートメンバーとして多くの学生にも参加してもらっています。

第1回のみやぎボイス2013では、混乱する復興の現場から被災者の声を集め、専門家とともに考える場づくりを目指しました。この人々の声を集めるという姿勢のもとで、続くみやぎボイス2014では被災者の住環境をテーマにし、2015年は福祉、みまもり、生業といった継続的な支援について討議を行っています。発災後5年目に当たる2016年には集中復興期間の終わりを見据え、復興制度やこれからの地域のあり方を取り上げ、2017年には再び地域の個別の問題に目を向けるテーマを設定しました。

なかでも、特に印象に残っているのは石巻の課題です。みやぎボイス2013で「市街地の復興」というテーマで取り上げられた石巻は、その後も継続的に再開発の手法、住民参加のまちづくりといった視点でシンポジウムの主要テーマとなりました。津波が襲った石巻市の中心市街地は、行政、専門家、NPOなど多くの人が復興に向けた取り組みを行っていますが、個別の事業が目立つ中、まちづくりの方向がなかなか見えません。ある商店街の方の「石巻の商店街で成立する事業は飲食店か駐車場ぐらい」という言葉が示すのは、震災で加速した構造的な小売業の崩壊です。市街地再生のために進められているのは再開発事業ですが、そうした事業は着手から完成まで数年という長い期間がかかり、復興途上の小さな商店街には大変な痛手です。「若い移住者を中心にゲリラ的にまちの空きスペースを借りて様々な事業がはじまっている、大きなプロジェクトの隙間で、時間や空間を埋める役割を担っている」というまちづくり会社の代表の言葉が示すのは、子育て施設、図書館、カフェ、家具工房など小さな事業が次々と立ち上がる石巻の現在を俯瞰しています。「石巻では30万円を稼ぐ仕事はないかもしれないが、10万円を稼ぐ仕事を3つ掛け持ちすることはできる」という新しい石巻の地域活性化組織の代表が語る通り、全国から集った小さな起業家、移住者が大きな役割を担います。「再開発がまちのとって大きな外科手術であれば、こうした小さい事業は鍼治療であり、まちの復興にはどちらも欠かせない」という都市計画家の発言は、私を含め被災店舗の再建や再開発事業に関わっている多くの人間にとって、ハード(建物)とソフト(事業)を結びつけ、復興への道筋を照らす大変貴重な気づきだったと思います。

日本では地震や台風といった様々な災害を避けて通ることはできません。震災後は、社会との関わりの中で自分の役割を考え、様々な横のつながりを作ること、建築の枠を飛び出して協働することの重要性を強く感じています。建築に興味のある皆さん、是非一緒に協働し、社会との関わりの中で一緒に学びましょう。

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