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児童教育学科教授 中込雄治

2015.11.09

私は、小学校教師となるのに必要な科目である算数科教育法の授業を担当しています。

小学校の教師を目指す学生達には、子どもからいろいろなアイデアを引き出せる教師になって欲しいと願っています。そのためには、まず学生自身が多様なアイデアを見出すことができるスキルを身に付けておくことが必要です。授業では、多様なアイデアや解法を引き出すための教材研究の仕方も取り上げています。そうした授業の内容などを通して、教師を目指す学生達が宮城学院でどのようなスキルを身に付けているのかを紹介したいと思います。

 

ここでは「四角形の内角の和」を題材として取り上げます。算数・数学では、それまでに学んだこと、つまり既習事項を活用して新たな課題を考えていきます。「四角形の内角の和」は小学校5年生で学習しますが、それまでに「三角形の内角の和」が180° であることを学んでいます。そこでこの「三角形の内角の和」を既習事項として活用して、「四角形の内角の和」を考えていきます。具体的には,四角形を三角形に分割するというアイデアです。図1~3は、実際に算数の教科書に掲載されている解法の例です。(「新しい算数5下」,東京籍,pp.6-7,平成23年度版)

図1では、四角形を対角線で2つの三角形に分割し、180°×2=360° として四角形の内角の和を求めています。図2では、辺BCの中点と頂点A,Dを結んで3つの三角形をつくり、余分な平角を引き、180°×3-180°=360° として求めています。図3では、四角形の内部にとった任意の点と頂点A,B,C,Dとを結んで4つの三角形をつくり、任意の点のまわりの余分な360° を引き、180°×4-360°=360° として求めています。

 

では、これらの解法をもとに、さらにいろいろな解法を引き出してみましょう。多様な解法を引き出す手法として、ここでは「対の関係」や「特殊と一般の関係」に着目する方法を用いていきます。「対の関係」とは、上に対して下、右に対して左、プラスに対してマイナスのような関係を指します。例えば、図1で右下がりの対角線に着目すると、「対の関係」から図4のような右上がりの対角線を使った解法を見出すことができます。図1と図4は構造的には同じものですが、この段階ではまだ別物ととらえている子どもも多く、そうしたとらえ方も尊重します。次に図2に注目してみます。ここでは辺BCの中点をとって3つの三角形に分割していますが、果たして辺BCの中点である必要があるでしょうか、と考えていくと、図5のように実は辺BC上の任意の点Pでも同じようにして四角形の内角の和を求めることができることに気付きます。つまり、図2は図5の特殊な場合、逆に図5は図2を一般化した場合ととらえることができ、これらは「特殊と一般の関係」にあるといえます。さらに、この図5の点Pを動かしていって、頂点Cに重ねたものが図1、頂点Bに重ねたものが図4ととらえると、図1図4と図5の間にも「特殊と一般の関係」を見出すことができます。

実は、この「四角形の内角の和」の箇所は、学生達が小学校の教育実習においてよく研究授業として行うところでもあるのですが、図3の解法が子どもから出てくることはまずありません。しかし、図6のような2本の対角線で4つの三角形に分割する解法ならば、子どもから出てきます。そこでこの図6の解法を特殊な場合ととらえて「特殊と一般の関係」に着目して、図3の解法へと導いていきます。つまり図6では2本の対角線で4つの三角形に分割していますが、果たして対角線である必要があるでしょうかと、考えていくと図6の対角線の交点をつまんでひょいと動かすようなイメージで、図3の解法を見出すことができます。写真1は、対角線をゴムひもでつくった教具で、写真2のように対角線の交点をつまんで動かすことができます。 (これは児童教育学科3年生の加藤佐和子さんが開発した教具です。) こうした教具を使うと、図6と図3の間にある「特殊と一般の関係」が一目瞭然でわかります。

図3における任意の点をQとすると、図1はこの点Qが頂点Cに重なった場合、図2は辺BCの中点に重なった場合、図4は頂点Bに重なった場合、図5は辺BC上にある場合ととらえると、図1,2,4,5と図3も「特殊と一般の関係」にあることがわかります。したがって、これら図1~6の解法はすべて関連付けてとらえることができます。その関連を表したのが関連図1です。(点線が「対の関係」を矢印が「特殊と一般の関係」を表しています。) このような関連図をつくっておくと、解法間の関係を構造的に把握することができ、子どもから多様なアイデアを引き出すときに、どんなヒントを出せばよいのかがわかります。

写真3は開発した教具から見出した特殊な場合で、図5と「対の関係」になっている解法です。このように「特殊と一般の関係」に着目して見出す解法は、「特殊」から「一般」を見出す場合だけでなく、「一般」から「特殊」を見出す場合もあります。写真4はこの教具を使って学生が行った模擬授業の風景です。(算数の教具開発に関しては宮城学院女子大学の「さなぎプロジェクト」(学生の自主活動)として「算数教具開発プロジェクト」という組織が活躍しています。)

「対の関係」や「特殊と一般の関係」を、多様なアイデアを引き出す手法として意識的に活用することにより、子どもからいろいろなアイデアをたくさん引き出し、子どもに自分なりの解法を見出すことの楽しさを伝えられるような教師になって欲しいと願っています。
(ここで述べた数学的手法を教育に取り入れるにあたっては、恩師である数学者黒木伸明氏から多くの示唆をいただきました。)

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